間が空きましたが前回の続きです。いよいよ実際にドームへ映像を投影してみました。
投影する映像を作ります。単にテストパターンを映してもおもしろくない(大した知見も得られない)ので、できるだけ実践的な内容にします。本家PODで実際に稼働しているコンテンツをなぞってみるのが一番ですが、さすがに『戦場の絆』は大変なので、『マッハストーム』もどきを作ってみることに。
マッハストームは戦闘機コクピットからの視点で空中戦を繰り広げるゲームですが、敵機を追いかける基本的な操縦は自動で、プレイヤーは照準を合わせて攻撃ボタンを押すだけという簡単さが特徴。コアゲーマー向けの『絆』に対して、気軽にPODを体験してもらうためのアトラクション的な位置づけとのこと。デモにはぴったりです。
ゲームができたら投影。スクリーンは半球状のものならなんでも構いませんが、今回はどんぶりを使いました。手に入りやすく大きさも手頃です。ただし、ツルツルの表面が光を反射してしまい映像が乗りにくかったのでサーフェイサーを吹いて内側のツヤを消しました。
投影結果は冒頭のビデオ通り。ところでよく見ると、映像がきれいな魚眼ではなく、いびつに歪んでいることがわかります。変換処理がいいかげんなのは前回書いた通りですが、じつは水平と垂直の画角が異なるという根本的な問題があるのです。
180°の画角はまともにレンダリングできないので左右90°ずつに分けてレンダリングする、というのがPOD映像の仕組みでした。ここでいう画角はつまり水平画角です。では垂直画角はというと、同様に上下にも分割レンダリング、ということはしておらず、左右それぞれ(水平画角90°)の映像を縦長(比率1:2)にレンダリングすることで単純に角度を稼いでいます。この条件で計算してみると、垂直画角は約127°。180°の2/3しかありません。
本家PODはこれで問題ありません。映像の上下がトリミングされてドームに投影されるからです。
上下も180°完璧に表現するとなるとさらに負荷がかかり、ただでさえ表現の限られるぎりぎりのリソースでは実現が難しかったのでしょうか。しかし地を這う我々ヒトの知覚にとって水平の視界こそ重要で、必要な情報も下方に集中しているのが常。16:9のプロジェクター解像度も無駄なく使え、このトリミングはバランスの良い割り切り方といえます。
一方、こちらのPODでは丸いどんぶり一杯、垂直方向にもフルに投影したために水平画角との違いが表れてしまったのでした。概ねそれらしく見えていれば良しとするいつもの方針でとくに対処しませんでしたが、もし応用する機会があれば、改めて考え直すか本家同様トリミングすることにします。