自作p.o.d. #2 “Mach Stall”

間が空きましたが前回の続きです。いよいよ実際にドームへ映像を投影してみました。

投影する映像を作ります。単にテストパターンを映してもおもしろくない(大した知見も得られない)ので、できるだけ実践的な内容にします。本家PODで実際に稼働しているコンテンツをなぞってみるのが一番ですが、さすがに『戦場の絆』は大変なので、『マッハストーム』もどきを作ってみることに。

マッハストームは戦闘機コクピットからの視点で空中戦を繰り広げるゲームですが、敵機を追いかける基本的な操縦は自動で、プレイヤーは照準を合わせて攻撃ボタンを押すだけという簡単さが特徴。コアゲーマー向けの『絆』に対して、気軽にPODを体験してもらうためのアトラクション的な位置づけとのこと。デモにはぴったりです。

MachStall

というわけで作った。空間には敵機しかおらず、その座標を追いかけつつ上下左右に多少動かせるだけの簡単なもの。手っ取り早く本格的にするならAssetStoreにあるフライトシムプロジェクトを利用するのも手かも

ゲームができたら投影。スクリーンは半球状のものならなんでも構いませんが、今回はどんぶりを使いました。手に入りやすく大きさも手頃です。ただし、ツルツルの表面が光を反射してしまい映像が乗りにくかったのでサーフェイサーを吹いて内側のツヤを消しました。

Donburi

サーフェイサーは磁器にも使えた。白いサーフェイサーを使ったが、実際に映像を投影してみると映像が明るすぎ、照り返し(内側に湾曲しているため互いに反射する)によってコントラストが落ちてしまう。灰色にしたほうが良さそう

POD Equipments

ジョイスティックと備品の小型プロジェクター『QUMI Q5』。これで操作・投影する

投影結果は冒頭のビデオ通り。ところでよく見ると、映像がきれいな魚眼ではなく、いびつに歪んでいることがわかります。変換処理がいいかげんなのは前回書いた通りですが、じつは水平と垂直の画角が異なるという根本的な問題があるのです。

180°の画角はまともにレンダリングできないので左右90°ずつに分けてレンダリングする、というのがPOD映像の仕組みでした。ここでいう画角はつまり水平画角です。では垂直画角はというと、同様に上下にも分割レンダリング、ということはしておらず、左右それぞれ(水平画角90°)の映像を縦長(比率1:2)にレンダリングすることで単純に角度を稼いでいます。この条件で計算してみると、垂直画角は約127°。180°の2/3しかありません。

POD Unity

縦長のレンダーテクスチャに左右分割レンダリングし球面にマッピング

POD Check

市松模様をレンダリングしてみると縦横の密度が明らかに異なることがわかる

本家PODはこれで問題ありません。映像の上下がトリミングされてドームに投影されるからです。

POD Mask

戦場の絆やマッハストームはこんな形にトリミングされている。視界は下方により広くとられている

POD Screen

マッハストーム実物の様子。上がすっぱり切れているが、体感としては帽子のつばほども気にならない

上下も180°完璧に表現するとなるとさらに負荷がかかり、ただでさえ表現の限られるぎりぎりのリソースでは実現が難しかったのでしょうか。しかし地を這う我々ヒトの知覚にとって水平の視界こそ重要で、必要な情報も下方に集中しているのが常。16:9のプロジェクター解像度も無駄なく使え、このトリミングはバランスの良い割り切り方といえます。

一方、こちらのPODでは丸いどんぶり一杯、垂直方向にもフルに投影したために水平画角との違いが表れてしまったのでした。概ねそれらしく見えていれば良しとするいつもの方針でとくに対処しませんでしたが、もし応用する機会があれば、改めて考え直すか本家同様トリミングすることにします。