球体プロジェクション #1 概要

昨年某イベントにて球に映像を投影しました。会場に浮かぶ球体を映像によって地球や月といった天体に模し、そこにクライアントのブランドロゴムービーを流すという演出展示です。

球に映像を映すにはさまざまな方法が考えられますが、実現性や見栄えなどの兼ね合いから、球の前後左右4方向からプロジェクターで映像を投影することになりました。

sphere sketch 1

システムのスケッチ。球の周囲にあるのがプロジェクター。下から見上げる格好になるのと設置の都合からやや仰角がついている


スクリーン

業者に製作を依頼した白色バルーンを球体スクリーンとします。直径は1.5メートル。十分な明るさで映像を映すには投影面積に比例して強力な(高価な)プロジェクターが必要となるため、ほどほどの大きさに留めなくてはなりません。広い会場では小さく見えてしまう懸念がありましたが、実際に設置してみると、大きすぎず小さすぎずちょうど良い大きさだったと思います。

balloon

オフィスで膨らませると相当大きく見える。ちなみにこの素材のバルーンにヘリウムガスを入れて浮かばせるには、浮力と重量のバランスから最低でもこのくらいの大きさが要るとのこと

投影

投影映像はUnityで出力。3DCGの球体モデルをひとつ作ってその周囲4箇所にカメラを配置し、各カメラのレンダリング結果を4台のプロジェクターでバルーンへ投影します。

cameras

球モデルの前後左右にカメラを配置

viewports

各カメラのレンダリング結果。これを4台のプロジェクターで投影する

調整機能は画角設定や変形など普通のプロジェクションマッピングと同様。ただし今回の構成では各投影映像同士が大きく重なるため、輝度の増幅を避け境目が目立たないよう周辺光量落ちさせる(光量が落ちた部分同士が重なるとちょうどいい明るさになる)機能を加えました。

sphere sketch 2

球への投影映像はこんなふうに重なる。光量落ちの加減はあらかじめ厳密に計算しておくより現場で柔軟に調整できるようにしておいたほうが良い結果を得やすい

ブランドロゴムービー

肝心の映像内容。鑑賞者の視点がある程度限られるのならトリックアート的な立体感ある演出も可能ですが、今回は360度どこからも見られるうえ、4方向からのレンダリング結果が重なるためあまりデコボコさせると破綻します。なのでコンテンツは球表面のテクスチャのみで表現することにしました。

クライアントのブランドロゴムービーは当社のCGアーティストが制作。両端がシームレスにつながっているほかはごく普通の2D映像で、これをムービーテクスチャとして球に貼り付けます。この方法では映像を一般的なフローで制作できる反面、画面上下端は極にマッピングされ大きく歪むため、実質的な情報表示領域は画面中央付近(球の赤道付近)に制限されます。

地球・月

天体の地の模様はUnityで制作しました。地の模様はムービーに含めることもできましたが、そうすると天体のバリエーションを出しにくい(背景の違いだけで同様のムービーを複数用意しなくてはならない)のと、当初Unityで扱えるムービー品質の問題もあったことから(後に解決)、ムービーとは異なるレイヤーに別途天体テクスチャを貼ることにしたのです。

まず地球ですが、単に一枚絵を貼るだけでは芸がありません。しょせん背景、ダイナミックなムービーの影に隠れて目立たないので芸などなくて構わないかもしれませんが、ジオコスモスみたいなものを作ってみるまたとないチャンスです。クライアントの要望イメージにはTeNQもあったので、ブラッシュアップの方向としても間違っていないでしょう。